蒼の歩み
――帰りの車の中では、こんな会話を繰り広げ。



「今更だけど、真歩明日仕事あるよな。あんまり遅くなったらまずいか」



「ん、明日は午後からだから大丈夫。蒼君は?」



「俺、実は明日も休み」



「えー!ずるい」



「真歩も休みだったなら、このままもう少し2人で何処か行きたかったな。逃避行、とうひこー」



「え、なにそれ。それなら明日休み取ったのに!」



「嘘」



「えぇえぇぇぇ……。なんか、からかわれたんですけど」



「面白ェ奴」



そう言って笑う彼の横顔を見て、思う。あ、デジャヴだ。似たような会話以前にもあった。



「うー……。私、学習能力が足りないのだろうか。成長したいよ」



「成長したいってのは、胸か」



へ?



「いや、まあ、そこもだけど……」



って、何言わすんだよ。我ながら悲しくなってきたぞ。というか、胸って。これセクハラじゃありません?



「だろ?腕立て伏せして胸筋鍛えればデカクなるんじゃねーの。力入れる度にぶるんぶるんしそうだが。……うわー、引くわー」



「……あのさぁ、勝手に想像して勝手に引くのやめてくんない」



……この人は時々、良い感じに腹立つ時がある。



「なんで成長してないこと知ってるんだよぅ……」



むー、と自分の胸に両手を当ててみる。



「想像させたのおめーだろ、本当に成長してなかったのか。ま、大きさじゃねえ、形だ形」



「えっ……」



蒼君の好みの胸の話かと思ったのも束の間で。



「あんまり凸凹してたらまともに料理できねーだろ。まな板的な」



な、なんだそりゃ!



何だか胸の話は恥ずかしくなってきたので、話題を変えよう。



「ねぇねぇ。突然な質問だけど、蒼君は高校卒業してから進学したの?大学とか行ってた?」



我ながら本当に突然だ。
< 110 / 142 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop