蒼の歩み
「専門学校に行ってたぜ。なんで」



話題を変えたかったから聞いた、とは言えず。



「だって蒼君のことは何でも知りたいんだもん」



でもこれは本音。



「はいはい。で、何で」



「だから蒼君のこと知りたいからって言ってるのに……。でも最近、悩んだな。大学や専門学校行ってる方がスキル高いのかな、とか」



この前遊んだ女友達は、何を隠そう職業はCAで。彼女との仲が深まったのは中学生になってからだが、幼稚園の頃から一緒だった小さい頃から知っている彼女が、高校卒業後すぐに良い大学に通い立派な職業に就いて。



高卒フリーターな私とは大違い。……なんでこうも、差がついちゃったかな、と。



「どういう進路を辿ろうと、本人次第じゃねェか。専門行ってるからといっていいとは限らねェ。現場を知らず頭だけデカイんで、先輩の指示を素直に聞かねェって奴もいる」



「ほぉ……」



蒼君の身近に、そういう人がいるってことなのかな?



「……とはいっても、大学行ってねーと就職の窓口が狭くなんのも現実」



「私、高校生と大学生の就活先が一緒なのが、個人的に気に入らないんだけど」



ああ、確かにソレは俺も思ったことがある。と、ハンドルを握りながら彼は言う。




「努力次第で変わるモンもあるんじゃねーかな。いくつになってもやりてェ事が見つかりゃそっからスタートすればいい。あとはテメーの覚悟とケツ上げられるかどうかなんだろうな」



「うん、そっか……。ちょっと、知人友人が公務員やらCAやらになってるから自分と比べちゃってた。好きを仕事にしてる人ってどれくらいいるんだろ。一握りなのかなぁ」



「おめーの知り合いもそれ相応の努力はしてんだろ。CAは今かなり狭き門と聞く。公務員も何度も落ちてる奴もいるぜ。好きな事を仕事にするのがいいのかってったら、そういうワケでもねーしな。好きだからこそ趣味にしておいた方がいい事もある」



「なるほど……」



彼の意見や考えは、なるほどと感心することが本当に多い。どうしたら私も、彼のような考え方をすることができるようになるのだろうか。



「どんな仕事も遣り甲斐が見付けられるかどうか、じゃねーのかな。それと、真歩が何遣りてえのかはわからねェが、真歩にも真歩だからこそのいい所がある筈だ。自分の道見て頑張んな。おめーはおめーのまま居ればいいんだよ」



「あ、ありがとう」



私は私のままでいればいい。最後の言葉は、けっこう心にきた。



「でも、それが私、やりたいことは特に無くて。学生の時からそうで。何ヶ月か前に友人に、やりたいこととかないの?みたいなの聞かれて、少しグサッときた。このままだとダメだと言われたみたいに感じたの」
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