蒼の歩み
――数十分間、いつの間にやら眠りについていたようだ。私は、突然の来客に起こされた。呼び出し音が、部屋に響く。
時計に目を遣ると、日付が変わる1時間前。こんな夜遅くに、一体誰が……?このような時間にアポ無しで訪問してくる友達は、思い浮かばない。
警戒心を隠せずに居て、部屋のドアを開けれずにいる。悪戯かもしれないと、様子見をしていた。すると――
「おい、真歩。どうしたんだ、何かあったのか」
「……!?」
聞き覚えのある声が、薄いドアの向こうから微かに聞こえてきて。
職場で抱いたのとは違う意味で、頭が真っ白になって。鏡を確認していつの間にやら零していた涙の痕を急いで隠した後、恐る恐る扉を開ける。
「蒼君……!?」
扉の向こうにいる人物の正体はわかっていたけれど、目で確認すると更に驚きが込上げてきて。
「どうし、て……」
か細い声が、己の唇から零れる。
「どうしてって、お前。そりゃあ、あんなブログ見ちまったら心配するだろーが」
返信もこねーし電話も出てくれねーし、こうするしかなかったと彼は言う。
自分が今、どんな顔をしているのかわからない。が
「……こんな風に気に掛けてくれるのは、蒼君だけだよ」
自然とこう口に出て、上がってよ、と私は彼を部屋に招こうとした。……思えば、私が彼の家にお邪魔したことはあっても、彼が私の部屋に来るのは初めてだ。
「……いいのか?」
「うん」
幸い、部屋も片付いていたし部屋着ではなかった。それでも彼は、私の部屋に入るのを遠慮した様だ。車で来てるからよければ車に乗らねーか、と言われたので、従うことにした。
2人して車に乗り込んだ、直後。
「……で、何かあったのか?真歩」
優しげに、聞いてくる彼。俺でよければ話せよ、と。……私はけっきょく、彼の言葉にいつも甘えてしまうんだ。説明し辛いだとか先ほどは思っていたはずなのに、彼の顔を直接見たからなのか何なのか、安堵感やら色々混じり。
「……大きな失敗をしてしまって。自分ではそういうつもりはなかったけれど、結果的に不正だと思われても仕方が無いことをしてしまった」
聞いてもらってしまえ、と。
「仕事のことか?」
「うん。……とても、心外だった。形はどうであれ、辞めになってしまうことは別にいいかと開き直った。ただ、そういうことをしたと思われたままなのはやはり嫌なので、どうせなら私という存在自体みんなの記憶から無くなってしまえばいいのにな、と思ったの」
「そうか、失敗の原因は自分でわかっているのか?」
「うん。わかってる、わかってるけれど、直せないのかなって。私、多いんだこういうの。勘違いされるというかなんというか」
事柄や内容は全然違うが、以前にも誤解を招いてしまうような出来事を、起こしてしまったことがある。
時計に目を遣ると、日付が変わる1時間前。こんな夜遅くに、一体誰が……?このような時間にアポ無しで訪問してくる友達は、思い浮かばない。
警戒心を隠せずに居て、部屋のドアを開けれずにいる。悪戯かもしれないと、様子見をしていた。すると――
「おい、真歩。どうしたんだ、何かあったのか」
「……!?」
聞き覚えのある声が、薄いドアの向こうから微かに聞こえてきて。
職場で抱いたのとは違う意味で、頭が真っ白になって。鏡を確認していつの間にやら零していた涙の痕を急いで隠した後、恐る恐る扉を開ける。
「蒼君……!?」
扉の向こうにいる人物の正体はわかっていたけれど、目で確認すると更に驚きが込上げてきて。
「どうし、て……」
か細い声が、己の唇から零れる。
「どうしてって、お前。そりゃあ、あんなブログ見ちまったら心配するだろーが」
返信もこねーし電話も出てくれねーし、こうするしかなかったと彼は言う。
自分が今、どんな顔をしているのかわからない。が
「……こんな風に気に掛けてくれるのは、蒼君だけだよ」
自然とこう口に出て、上がってよ、と私は彼を部屋に招こうとした。……思えば、私が彼の家にお邪魔したことはあっても、彼が私の部屋に来るのは初めてだ。
「……いいのか?」
「うん」
幸い、部屋も片付いていたし部屋着ではなかった。それでも彼は、私の部屋に入るのを遠慮した様だ。車で来てるからよければ車に乗らねーか、と言われたので、従うことにした。
2人して車に乗り込んだ、直後。
「……で、何かあったのか?真歩」
優しげに、聞いてくる彼。俺でよければ話せよ、と。……私はけっきょく、彼の言葉にいつも甘えてしまうんだ。説明し辛いだとか先ほどは思っていたはずなのに、彼の顔を直接見たからなのか何なのか、安堵感やら色々混じり。
「……大きな失敗をしてしまって。自分ではそういうつもりはなかったけれど、結果的に不正だと思われても仕方が無いことをしてしまった」
聞いてもらってしまえ、と。
「仕事のことか?」
「うん。……とても、心外だった。形はどうであれ、辞めになってしまうことは別にいいかと開き直った。ただ、そういうことをしたと思われたままなのはやはり嫌なので、どうせなら私という存在自体みんなの記憶から無くなってしまえばいいのにな、と思ったの」
「そうか、失敗の原因は自分でわかっているのか?」
「うん。わかってる、わかってるけれど、直せないのかなって。私、多いんだこういうの。勘違いされるというかなんというか」
事柄や内容は全然違うが、以前にも誤解を招いてしまうような出来事を、起こしてしまったことがある。