蒼の歩み
免許証、だ。



紙に紛れて、免許証がそこに置かれている。反射的に、生年月日の欄を私は見てしまう。



――と、その時。トイレの水の音がしたので、私は急いでその場を離れた。



蒼君がトイレから出てきた。私は平静を装って、携帯を今まで触っていたフリをした。……なんだろう、このちょっとした罪悪感は。



蒼君には私の一連の動きはバレなかったようで、普段通りに話題を振ってきた。



「真歩は、トイレ大丈夫かい」



……仮に行きたかったとしても、男性の、蒼君の前で言うのは何となく恥ずかしいのだが。
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