蒼の歩み
「じゃ、お手洗い借りようかな……」



後から行きたいって言い出すのも忍びないし、ここはさっさと用を足しとくか。行きたくないかと問われれば、尿意を催している自分がいることに気がついてしまった。



「あー、それなんだけど」



「ん?」



「俺の家のトイレ、今不調みたいでね。水が流れにくかった」



「……え?」



どういう、こと?



「だから、俺のは使わないほうがいいかもな。そうだ、近くのコンビニのトイレでも借りるか。俺も買いたもんあるし」



「え、あ、うん……。わかった」



何でそんな、やけに説明口調なのだろうか。




「ちょっと待ってろ、出かける準備するから」



「う、うん……」



近くのコンビニに行くのに、出かける準備?蒼君は、ゆっくりとパーカーを羽織ったり、気のせいなのか動作がやたらと遅く感じた。え、と。行くなら早く行きたいのですけど……。



「それじゃ、行くぞ」



「うん」



靴を履き、外へ出る。私は車で行くものだと思っていたので、助手席側で待機していた。すると



「なぁ、たまには歩いていこうじゃねーか。散歩がてらにいいだろ」



「え」




まあ、蒼君がこう言うのなら……。しかし、口に出しては言えないが、私の尿意がそろそろ……。




「ちなみにコンビニまでは歩いて10分くらいかかる」



……え?
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