蒼の歩み
「ねぇ、蒼君!映画、良かったね!」



館内を後にして、私は目の前に座る彼にそう問う。今は、映画館近くのデパート内のファーストフードのコーナーで、ゆっくりとしているところだ。



「映画?そうだなァ。すげー良かったんだが、なんつーか、言葉にできねェんだよな。登場人物全員の思いが詰まっていて。1人1人がすげー良くて」




「うんうん……!」



「改めて、この作品に出会えた事に感謝したかな。この作品を教えてくれた奴や、俺が今まで出逢ってきた人たち。皆に感謝してェなと思った」



この人は。普段の言動ももちろんだけれど。作品1つ1つに対する感想もこんなに凄いのか。彼は私には無い感性を、持っているのだろうな。




「凄いね。そんな深い感想持ったんだ」



いや、そりゃ私もすごく良かったって思ったし、でも言葉に出来なくて。……あれ、これだと蒼君と同じになってしまう。
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