蒼の歩み
「よ、読み終わった?」



不意に声をかけられ、蒼君は我に返ったようだ。どうやら、偉く真剣に読んでくれていたみたいだけれども……。



「真歩」



「ん?」



「すげぇたくさん書いてくれたんだな……」



そう言って蒼君は顔に驚きの色を浮かべていたが、すぐにいつもの表情に戻った。



「あーらら……。真歩、またえらいモン拵えてくれたな。手書きのメッセージとは、手編みのマフラー並みに念が込もってそうでいけねェや。それに女ってのは、細けェ事をよく覚えてんのなー」



えらいモン……?と疑問を抱えながらも、蒼君の次の言葉を待つ私。



「そうだな……。あの、真歩に声を掛けた日からか。メールでもこうして逢った時にも俺によく話し掛けてくれるんで、大変って言い方もおかしいけどよ……。とにかく嬉しい悩みができちまった、と思ってた」



「うん……」



あとな、と蒼君は言う。

< 67 / 142 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop