蒼の歩み
「心のこもった手紙、嬉しいよ。ありがとな」



気持ちを込めたことも、きちんと伝わったみたいで。蒼君がまた私の頭に掌を乗せてぽんぽんと叩いてくるものだから、心の高鳴りが限界に達したようだ。



「こちらこそ……」



と、何とか声を絞り出すと。蒼君は、おー、と言いながら笑った。



「あーもー、蒼君大好き。誕生日だから、普段あんまり言わないからいっぱい言う!もう、ね。蒼君大好き好き……!」



といっても彼の誕生日は、数時間後だけれど。と、脳内で自分に突っ込みを後から入れながら。



「前から用意してくれてたんだもんな。その気持ちが嬉しい。……なんか色々言ってるみたいだがスルーしよう」



私の『好き』の言葉は、どうやら華麗にスルーされた模様。ストレートに好きと言葉に出して伝えるのは、けっこう恥ずかしかったのですが……。まあ、これが蒼君の通常運転だからなと思うと、妙に納得できてしまう私がいた。






蒼君がそろそろ送る、と言うので、私は素直に従った。
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