蒼の歩み
「ねぇ、あなた名前は何なんですか?」



「私の名前?七瀬ですが。あなたは?」



あなた、じゃ呼びづらいので、仕方なく名前を教えることにした。そして私も相手の名前を尋ねた。が、



「私の名前?貴女に教える筋合いはありません」



……。本当、何なんだろう、この女(ヒト)。失礼とわかりつつも、改めて相手の顔や容姿を眺めてみる。金に近い明るめの茶髪に、若干つり目。初対面にも関わらず、威圧的な態度。私にはそう感じた。



……気が強くて、負けず嫌いで。言いたいこと何でも言えちゃうような。私には無いものを持っている彼女。活発さがあるのだろうか。



もしかして、蒼君の好みの女性ってこういう方なのかな……。ほら、前に。気が強い女性が好みみたいなこと、言ってたもの。考えたくも無いのに、そんな思考が頭を過ぎった。



「見て」



彼女は、何かを差し出してきた。……小さな色画用紙?





彼女に言われて、その紙に目を通すと。




Merry Christmas あやか





と、そこには書かれていた。恐らく、あやかというのはこの方の名前だろう。



「……?」



私に、このメッセージカードを見せてきた意図がわからず、思わず小首を傾げた。……それと同時に、この英語と日本語の組み合わせ、文字の感じや配置などに見覚えがあった。蒼君が私に手渡してくれたメルアドを記載した紙に酷似している。



もしかして、これって。



「秋塚さんが、私に書いてくれたものなんです」



……嫌な予感が、的中してしまった。



ちょっと誇らしげな、勝ち誇った様な『あやか』さんの表情。綺麗な字よね、とメッセージカードをパタパタとさせている。

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