蒼の歩み
どうして、なぜ。彼女は私にメッセージカードを見せてきたの？



クリスマスに彼と過ごしたと、そう主張したかったのか。そのクリスマスカードが彼女の手に渡されたのは、去年なのかもしかしたらもっと前のものなのか。『私は貴女よりも秋塚さんと長い付き合いなのよ』とでも言いたいのか。



「……私はね、貴女よりも秋塚さんと付き合いが長いんです」



……当たってしまった。それはまるで、私の知らない蒼君も知っているとでも言われているかのようで。



そもそも、そのようなカードをカバンの中に入れて持ち歩いているということは、あやかさんはやはり蒼君に好意がある……。



色々と考えてしまっている私は横目に彼女は、満足そうに笑っていた。



何なの、何がしたいの……？




「……よかったですね、メッセージカード貰えて。蒼君は、誰にでも優しいですからね」



私なりの嫌味のつもりだった。誰にでも、の部分を強調した。しかし彼女には嫌味が通じていない様子。それどころか、自分の言葉がブーメランのように跳ね返ってきた。……そうだ、彼はきっと誰にでも優しい。私なんかとも話してくれるのは、優しいからなのか……。



アレコレ考えている私に向けて、あやかさんは、こう言葉を放ってきた。



「私、そろそろ帰りますね」



自分から声をかけておいて、そろそろ帰りますねとは何事か。……とは思ったけれど、口には出さず。



私も帰ります、さようなら。とだけ言って、何故だか逃げるようにして私はこの場を去った。



歩きながら、思う。……蒼君の、手描きのメッセージ。蒼君がどんな想いで彼女にカードを送ったのかはわからないが、あのカードからは蒼君の優しさを感じ取った。



蒼君が他の人に向ける優しさを形にして目の当たりにしてしまった所為か、あやかさんに色々言われたからか何なのか、心が気持ちがモヤモヤとして、私の瞳からは一粒の雫が零れ落ちてきた。



変な私。おかしいよ私。




……こんな顔、あやかさんに見られなくてよかった。
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