蒼の歩み
そんな私の話を、蒼君はうんうんと頷きながら聞いてくれていた。



「……逢った、っていうのはちと語弊があったな。……俺が、一方的に見ていただけだから」



蒼君にしては珍しく、段々と小声になっていったので私は上手く聞き取ることができなかった。



「えっ?」



「いや、何でもねぇや。それより真歩は、心理学とかそういうの興味あるかい?」



「心理学?うん、好きだよ。そういうの」



「俺も、ちと興味ある」



「そうなんだ。あ、心理学と言えば。これ、見てよ」


最近、買ったんだ。と、私は数日前に買った心理学の本をカバンから取り出し見せた。バスの中等で読む為に持ち歩いているのだ。



「へぇー、オメェがこんな本をねぇ……。これはまた意外というか」



私が出した本を手に取り、まじまじと見つめながら彼は言う。



「そんなに、意外だったかな?」




「まぁまぁ、また何か聞かせてくれよ。真歩の人物像がまだできてねェ」



「えっ……!こんだけ話してるのに人物像ができてないとな……。うん、でも、私って蒼君と話す時と他の人と会話する時とではもしかしたら違うのかもしれない。だから余計掴めないのかな?」



別に、ぶりっ子しているだとか彼の前では性格を作っているだとか、そんなんじゃないけれど。蒼君の前では、テンションが増したり迷子になることが多い、そういう意味での言葉だった。



「あ、それで。聞かせて、とは?私のことを?」



「人ってのは表面だけサラッと話しただけじゃ分からねェんでな。こうして直接会話してると、体裁保とうとする働きもあるんで中々本音も聞けねェよな」



「な、なるほど……。なんかね、蒼君のそういう意見っていうのかな。考え方、好きだわ」



むしろ蒼君自身が、心理学を学んでいそうなイメージだ。



「そうだ。これ、本題な」



そう言って蒼君は、先ほどの私と同じように、己のカバンから1冊の本を取り出して見せてきた。



「ソウルメイトの、仕組み……?」



「心理学とはちょっと違うが、似たようなモンがある。知り合いが持ってたんでね、借りてみたんだ」



「ほー……」



こう言った類の本は、興味がある。どうやら私も彼も同じようで。また1つ共通点を見つけることができたな、と。私は1人で嬉しくなっていた。



「で、さっきの真歩の話で。この本思い出して。気になった部分があるんだ……」



何処だったかな、と彼はページをパラパラと捲っている。
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