蒼の歩み
女性の姿を確認した蒼君は、みるみると表情が明るくなっていった。



「姐さん!お久しぶりです」



姐さん……?



「久しぶりだね。なに、デート?」



「そんなんじゃありませんよ」



私は『姐さん』と目が合ったので、お互いそっと一礼をした。彼が姐さんと呼んだ女性は、3~4歳位のお子さんを連れていた。



「これから、友達と食事の待ち合わせしてるの。旦那には内緒で。それじゃあ、またね蒼真君」



「はい、また」



蒼君の表情はというと、今までに見たことのない笑顔……?心なしか、声も弾んでいるように感じた。



女性が去った後、蒼君は私に、昔ちょっと世話になった人なんだ、と説明してくれた。
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