蒼の歩み

――偶然なのか何なのか。今度は蒼君が自宅前に車を停め、車から降りた瞬間に。



「あ、秋塚ァァ！」



と、遠くから女子高生が駆け寄ってくるのが見えた。制服姿なところを見ると、登下校中なのだろうか。



「秋塚ァ、聞いて聞いて聞ーてーー」



女子高生は元気良く、私達――。いや、蒼君に向かって突進してくるうな勢いで迫ってきている。



「お、なんだよ。うるせぇな」



走り寄って来た女の子の頭を蒼君は手で制している。あ、それいいな。実質、蒼君に頭撫でてもらってる。……っと、こんな事考えている場合ではない。



「あのね、聞いてよ。今日学校でさ……」



と、ここまで言いかけて。女子高生は私の存在に気がついたようだ。蒼君から離れて慌てて挨拶をしてきたので、私も一言こんにちはと返しておいた。



「な、この通り今日は客人がいるんだ。話なら今度聞いてやる。それでいいか？」



「ん、わかった……。じゃあね、秋塚」



「おー」



そう言うと女子高生はけっこうあっさりと、この場を離れていった。



「おっと、悪ィな真歩。上がってくれよ」



と、蒼君が先を歩くので、私は彼の後に続き家へと入った。