もし、全てが嘘なら。
第1章 裏切り者。
相川詩織は愕然とした。

何が起こってるのかまだ掴めなかった。

「はい?」

私は首を傾げると、いきなり腹部を蹴られ、水たまりに尻餅をついた。

「お前のそーゆー鈍感な所とか、全部うぜーんだよ!」

親友だったはずの森崎奈々子が私の胸ぐらを掴み言った。

(どういうことだろう。)
詩織は、痛みを感じるより先にそう考えていた。

さっきまで、親友なはずで、上層部の女子グループからいじめられてたはずの森崎奈々子が、上層部の女子とグル?
つまり、私を騙してたの?

ようやく事態を少し把握した詩織は、急に全身の痛みを感じ始めた。

腕から出血し、長いスカートから出ている足は痣だらけだ。

カバンは水たまりに浸り、中の教科書も泥まみれになっている。

詩織はハッとした。

奈々子との交換ノートがカバンに入っているのだ。
あれには、たくさんの悩みや、2人の写真が貼ってある。

すごく大切なものなのだ。

詩織は痛みを耐えながらカバンに手を伸ばした。

「交換ノート…。」

そう呟くと、奈々子の左の子分の女はカバンの中から、泥まみれになった交換ノートを、取り出した。

「奈々子。こんなん捨てちまえよ。」

女は奈々子に交換ノートを渡した。

奈々子は、交換ノートに目を落とし、それを地面に叩きつけ、革靴で踏んだ。

「え…」

詩織は、地面に這いつくばるようにしてそれを見た。

「あんたとの親友ごっこも終わり。
まぁ、騙されて私を必死に守ろうとするあんたをみてるのも最初は暇つぶしになったけど、もう飽きたのよ。
だから、今度はあんたをターゲットにすることにしたの。」

奈々子は微笑を浮かべながら言う。

「明日からの学校楽しみにしててね」

そう言い残し笑いながら奈々子率いる上層部の女子達は立ち去った。

詩織は、暫く呆然としていたが、立ち上がった。

もう辺りは真っ暗だ。
学校帰りだった詩織は焦ってケータイを開くと母、悦子からの不在着信が何十件もきていた。

帰らないと。





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