ハートロッカー
ズボンのポケットに入っている通帳と20万と言う大金に、頭のいい安部が気づかないことを願った。

「安部は何?

買い物か何か?」

質問を投げたあたしに、
「おおっ、わかってんじゃん」

安部が嬉しそうに言った。

「また夕飯はパスタなんですか?」

毒づくように聞いたあたしに、
「正解、よくわかったなー」

安部が嬉しそうに返した。

何がわかってんだか。

自分たちが言ったんじゃない。

上野は料理ができない、安部はパスタしか作れないって。

「いい加減、パスタ以外のレパートリーを増やしたらどうなの?

さくらさんか一葉姉さんに料理を教わろうと思わないの?」

「三春、説教くさい…」

ギロリと、安部をにらんだ。
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