ハートロッカー
スマートフォンは電源を切って、カバンの内ポケットに隠すようにして入れた。

腕時計に視線を向けると、1時を少し過ぎたところだった。

各駅停車の旅も悪くないなと、あたしは思った。

ただ単に交通費をケチっただけだけど。

次の駅で降りて、お昼ご飯を食べに行こう。

時間は山ほどある。

のんびり観光して、また電車に乗って、ゆっくりと家出を楽しもう。

「家出…と言うよりも、旅行だよね」

呟いて、笑った。

「次はT駅、次はT駅」

電車内にアナウンスが流れた。
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