ハートロッカー
――案外喫茶店って、見当たらないものなんだな。

1時間歩き回った末にようやく喫茶店を見つけた。

高校3年間を過ごした街だったとは言え、まだまだあたしの知らないところがたくさんあるみたいだ。

温かいカフェオレを飲んで、ホッと一息。

7時くらいになったら、今夜泊まるところを探そうかな。

カバンから文庫本を出して読み始めようとした時だった。

「三春ちゃん…だよね?」

名前を呼ばれたことに驚いて、あたしは文庫本を落としそうになった。

あたしに声をかけてきたのは、ミディアムの髪を内巻きにした背の高い女の子だった。
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