ハートロッカー
「ゆっくりしてってね」

千波はニコッと笑ってそう言うと、席を離れた。

…よかった。

あたしはまた胸をなで下ろした。

いろいろと聞かれたら面倒な展開になりそうだ。

せっかく夜まで時間を潰そうと思っていたのに、これでは大変だ。

また千波がやってきて、いろいろと聞かれたら今度こそ面倒な展開になる。

ヘタしたら、家出のこともバレてしまうかも知れない。

あたしは文庫本を開くと、それに見入って、千波を近づけないようにした。

内容なんて、全く頭に入ってこないけど。

温かいカフェオレが冷めるのを待ちながら、千波がこないことを祈った。
< 143 / 153 >

この作品をシェア

pagetop