ハートロッカー
「もらうならもらえば。

あたしはいらないから」

あたしの言うことに従うように、大政はコートのポケットにプレゼントを入れた。

「みんな、心配していますよ。

九重さんも、一葉さんも、上野さんも、安部さんも」

大政が言った。

「安部さんなんか、特に悔しがっていましたよ。

家出に気づかなかったって」

「…そう」

あたしは呟くように返事した。

そう言えば、最後に会ったのは安部だったなと思い出した。
< 152 / 153 >

この作品をシェア

pagetop