ハートロッカー
「九重兄さんなら今日は留守にしているわよ?」

三春さんが言った。

「えっ…」

俺はドアを閉めると、店内に入った。

「出かけているん、ですか?」

俺が聞くと、
「今日と明日だけど、五十鈴ちゃんの学校で造形展がやってるの。

一葉姉さんと3人で見に行ってるわ」

三春さんは答えた。

「…そうですか」

そう答えた俺の声は、ちゃんと自然だっただろうか?

震えてなんか、いないよな?

店内に九重さんか一葉さんじゃなくて、三春さんがいたから。

俺の心臓の音、聞かれてないよな?
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