ハートロッカー
フワリと、窓から入ってきた秋風が最近床屋へ行って切ったばかりの黒髪を揺らした。

新しい季節になると、どうもセンチメンタルになってしまう。

それはどうしてなのか、自分でもよくわからない。

季節は夏から秋へと移り変わったばかり。

それがただ単に寂しいだけなのかも知れない。

それとも…こいつらがラブラブしているのが、うらやましいだけなのか。

俺はそんな推測をしながら、ストローを口から離した。


その日の放課後は、所属している軽音楽部の週1回の休みだった。

「じゃあ、また明日な」

「じゃあなー」

下駄箱で七緒と針井ちゃんの2人と別れると、俺は靴を変えた。

校門を出ると、駅とは反対方向である『ニコニコ横町』へ足を向かわせた。

その途中で信号が赤になっていた。

立ち止まると、俺の隣に誰かが並んだ。
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