ハートロッカー
「笙さーん、コーヒー1つね」

安部は寺師に注文した。

「はい、コーヒーですね」

寺師はカウンターの方へ向かった。

「珍しいじゃない、あなたが1人なんて」

パタンとマンガを閉じてテーブルのうえに置くと、あたしは安部に声をかけた。

「俺だって1人になりたい時があるよ。

いつも上野とベタベタしてる訳じゃない」

「言い方に気をつけなさいよ、何よベタベタって」

あたしは呆れたように返すと、カプチーノを口に含んだ。

「何読んでたの?」

安部の質問に、あたしは読んでいたマンガを指差した。
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