ハートロッカー
「『多重人格探偵サイコ』…へえ、こんなのが好きなのか。

いい?」

「どうぞ」

安部はマンガを手にとると、ペラペラと目を通した。

「だいたいわかったわ」

あたしの前にマンガを出すと、安部は言った。

「3巻なのに?」

あたしの問いに安部は答えたくないと言うように横を向いた。

「お待たせしましたー」

寺師が安部の前にコーヒーを置いた。

安部はコーヒーを口に含むと、
「大政、結構いい子そうじゃん」

何の前触れもなく出てきたその名前に、あたしは途中までだったマンガのページを開いた。
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