ハートロッカー
しばらく歩いていると、『アウト・ブルース』の看板が見えてきた。

大正時代からあると言うこともあってか、大正の匂いがするモダンなデザインの看板だ。

同じくモダンなデザインのドアに手をかけると、チリリンと鈴の音を立てながらドアが開いた。

「うぃーす」

俺があいさつすると、
「おう、太くん待ってたよ!」

それまで五十鈴ちゃんと一緒に本を読んでいた九重さんが俺を迎えてくれた。

「ちわーす、約束のレコードを取りにきましたー」

俺が某国民アニメの三河屋さん風に言うと、
「ちょっと待っててー」

九重さんはそう返事すると、奥の方へと歩いて行った。

待っている間、俺は店内にあるレコードを見る。

おっ、これ限定盤じゃん。

後で一緒に出そうっと。

「あら、いらっしゃい」

限定盤のレコードを棚から出した俺の後ろから、誰かが声をかけてきた。

振り返ると、
「ああ、一葉さん」
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