ハートロッカー
前からあたしと同い年くらいの女がニッコリ笑って、あたしに向かって会釈をした。

あたしはそれを無視すると、その女の横を通り過ぎた。

「今の人、知り合いですか?」

大政が聞いてきた。

「知らない子」

あたしは答えた。

「でもあの人、三春さんのこと知ってるっぽいんですけど…」

「あたしは知らないわ。

人違いでもしたんじゃない?」

たった今あたしの横を通り過ぎた女に聞こえるように、わざと大きな声で答えた。
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