ハートロッカー
カチャッとカップを置くと、
「じゃあ…教えてさしあげましょうかな、三春の過去ってヤツを」

そう言って、安部さんはニヤリと笑った。

左耳につけているシルバーのリングのピアスがキラリと光る。

「DERRINGER」

英単語を安部さんが流暢に発音した。

「えっ、デ、デリ…?」

「デリンジャー。

俺、中学ン時の英語の先生に発音がいいねって言われたんだ。

両親は外国人じゃないし、そのうえ日本から1度も出たことがないんだけど」

発音のよさに戸惑っている俺に、安部さんは笑いながら言った。

「もう1度言うよ?

DERRINGER――三春の中学ン時のあだ名だよ」
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