空も飛べない…。
とめどなく涙をこぼし、華奢な細い手で、
俺を引き止めている。
「………離してくれないか?」
「いやっ…絶対、いや!!」
その子は更に腕に力を込めて、何がなんでも俺を離さまいとする。
「………逃げないで」
その言葉が、響いた。
「大切な人を失ったあなたに言える、いい言葉なんか見つからない。…大切なその人を越える事なんか、あたしにはできないよ………でもね…」
胸に、頭に、心に。
「好きだから」
その子の言葉が染みて、俺の中を侵食していって、離れない。