スイートな御曹司と愛されルームシェア
ドアがノックされたが、咲良は開けなかった。
「あなたのお兄さんがもうすっかり説明してくれたから、あなたの話なんて今さら聞く必要はないわ」
「いや、聞いてください。聞いてもらわないと理解してもらえない」
「理解なんかしたくもない」
咲良はドアチェーンをかけた。その金属音が耳障りに響く。
「咲良さん!」
ドアの向こうから翔太の声が聞こえてきたが、無視を決め込む。
「咲良さん、聞いてください。返事はしなくてもいいから、聞いていて……」
彼がドアに拳を当てたのだろう、コツンと小さな音がした。
「戸田創太は……咲良さんの言う通り、俺の義理の次兄です。以前、咲良さんに話した通り、兄さんたちに彼らの父と俺の母との結婚を認めてもらうには、俺は兄たちの出した条件に従うしかなかったんです」
咲良が返事をしないので、翔太が話を続ける。
「父に頼まれてTDホールディングスの経営企画部長に就任した当初は、少年野球チームのコーチも続けようと思っていました。でも、TDの事業に献身するのが戸田の人間だ、それ以外は認められない、と兄たちに言われました。右も左もわからない職場です。どんなにがんばっても、コーチとの二足のわらじは無理だった。野球もチームも子どもたちも好きだったし、コーチは辞めたくなかった。でも、母の居場所を作りたかったんです。母が義理の息子たちに軽んじられるのは我慢ならなかった。だから、母がきちんと入籍して、父に何かあったときには当然の権利を手にできるように、俺はコーチを辞めました」
「あなたのお兄さんがもうすっかり説明してくれたから、あなたの話なんて今さら聞く必要はないわ」
「いや、聞いてください。聞いてもらわないと理解してもらえない」
「理解なんかしたくもない」
咲良はドアチェーンをかけた。その金属音が耳障りに響く。
「咲良さん!」
ドアの向こうから翔太の声が聞こえてきたが、無視を決め込む。
「咲良さん、聞いてください。返事はしなくてもいいから、聞いていて……」
彼がドアに拳を当てたのだろう、コツンと小さな音がした。
「戸田創太は……咲良さんの言う通り、俺の義理の次兄です。以前、咲良さんに話した通り、兄さんたちに彼らの父と俺の母との結婚を認めてもらうには、俺は兄たちの出した条件に従うしかなかったんです」
咲良が返事をしないので、翔太が話を続ける。
「父に頼まれてTDホールディングスの経営企画部長に就任した当初は、少年野球チームのコーチも続けようと思っていました。でも、TDの事業に献身するのが戸田の人間だ、それ以外は認められない、と兄たちに言われました。右も左もわからない職場です。どんなにがんばっても、コーチとの二足のわらじは無理だった。野球もチームも子どもたちも好きだったし、コーチは辞めたくなかった。でも、母の居場所を作りたかったんです。母が義理の息子たちに軽んじられるのは我慢ならなかった。だから、母がきちんと入籍して、父に何かあったときには当然の権利を手にできるように、俺はコーチを辞めました」