スイートな御曹司と愛されルームシェア

「本当にあなたを騙すことが目的だったのなら、今さらやってきてこんな話をするはずないでしょう？　どうか咲良さん、信じてください」

　翔太の必死の声に、信じたい気持ちが小さなろうそくの明かりのように咲良の心にポッと灯った。

　翔太が訴えるような口調で言う。

「咲良さんさえ許してくれるなら、俺はあなたのそばにいたい。俺の居場所は咲良さんの隣しかないんです」

　心に灯った明かりが温もりとなって全身に広がり、咲良の目頭が熱くなった。翔太の言葉に偽りはない、と思った。私だって彼にそばにいてほしい。そう思った。

　けれど、それと同時に創太の声が聞こえてきた。〝あいつにはうちの株主企業の社長令嬢と見合いをして結婚してもらう〟〝そのぐらい役に立てば、楢木を戸田家の一員として迎えてやらなくもない〟

　咲良は涙声にならないよう、深呼吸してから言う。

「言ったわよね、私は年下男に興味なんてないって。恋に浮かれたお坊ちゃん、頭を冷やしなさい」
「頭は十分に冷静です」
「いいえ。本当に冷静なら、私への気持ちも一時的なものだって気づいているはずよ。ここでの居候が一時的なものだったのと同じように……」