スイートな御曹司と愛されルームシェア
第九章 運命でした
「がんばったね、花丸だよ!」
個人経営の学習塾、リトル・ベア・アカデミーの大きな窓のある教室で、咲良はデスクに広げたテキストに、赤ペンで大きな花丸を描いた。それを見て、デスクの前に立っていた小学一年生の女の子の顔がぱあっと輝く。
「やったー!」
「先週の宿題をちゃんとやってきたからだよ。わからなかったところができるようになったね」
咲良の笑顔に、女の子は嬉しそうにうなずく。
女の子にテキストを返してから、咲良は次に並んでいた男の子のテキストを受け取り、デスクに広げた。解答にさっと目を通して、正解のところに丸を、間違っているところにチェックをつける。
「優弥(ゆうや)くん、一問惜しかったね。この女の子がどう思ったのか、もう一度一緒に考えてみようか」
小学三年生の優弥と視線を合わせて咲良は言った。
「はーい」
優弥と一緒に国語の文章題の文章を読み、女の子のセリフのところで止める。
「この子はなんて言ってる?」
セリフを小声で呼んだ優弥が、「あっ」と小さく声を上げた。
「貝殻をもらって嬉しいと思ったんだね」
「そうそう!」
優弥が書き直した解答に、今度は青色のペンで丸を描くと、その男の子の日焼けした顔に笑みが広がった。