スイートな御曹司と愛されルームシェア

「疑問も解決したことだし、食べましょうか」

　笑顔の翔太に目の前に皿を戻されて、咲良の頬が熱くなる。

「ま、まあ、せっかく作ってくれたんだから、いただこうかな……」

　咲良は「いただきます」とつぶやくように言って、きつね色をしたフレンチトーストをナイフとフォークで小さく切って口に入れた。ふわりと甘酸っぱいオレンジの味が広がり、表面はかりっとしているのに、中はふんわり柔らかく、見た目以上のおいしさだ。咲良がじっくり味わいながら食べているのを見て、翔太がローテーブルの向こうから身を乗り出してきた。

「どうです、咲良さん？」

　悔しいかな、料理の腕は咲良より上かもしれない。思わず素直に誉めてしまう。

「おいしいわよ。オレンジ風味が新鮮だわ」
「気に入ってもらえて良かったです。牛乳がなかったので、オレンジジュースを使ったんですよ」

　嬉しそうな顔で自分の皿のフレンチトーストにフォークを刺す翔太を見て、咲良は声を上げる。

「えっ、冷蔵庫のオレンジジュースを使ったの？」
「そうですよ」
「賞味期限、切れてなかった？」
「ぎりぎり大丈夫でした」

　翔太の言葉に、咲良は小さく息を吐き出した。忙しさのあまり、ともすれば食事はコンビニ弁当で済ませがちだ。たまに買い物に行って、自炊しようとあれこれ買い込んでみても、結局は使い切れずに賞味期限や消費期限が切れたまま冷蔵庫に山積みという事態になってしまう。そんな状態の冷蔵庫を人に――ましてや男に――覗かれるのは恥ずかしい。

　皿がすっかりキレイになって舌もお腹も満足した咲良は、コーヒーを一口飲んで言った。

「おいしかったわ、ありがとう」
「どういたしまして。泊めてもらったお礼です」
「そう。じゃあ、これであなたをうちに泊めてあげた恩は返してもらったことにするから、お腹が落ち着いたら出て行ってくれるかな？」

　咲良の言葉に彼は驚いたように目を見開いた。