スイートな御曹司と愛されルームシェア
「俺の一方的な負けでしたけどね」
「そんなことないよ、リターンエースもあったじゃない。びっくりしちゃった」
「ラケットを振ったらたまたま決まっただけですよ」

 そう言ってタオルを首に掛ける翔太を見ながら、咲良は考え込む。

(身の上話についほろりとして面倒を見てあげるなんて言っちゃったけど、ラッキーっていったいどういう人なんだろう……)

 裸をチラリと見たことがあるだけだが、筋肉質で、運動神経の良さそうなしなやかな体つきをしていた。それに、瞬発力もあるし、足腰も強そうだ。

「テニス、したことないの?」
「はい。俺、中学、高校、大学と野球部でしたから」
「そうなんだ。甲子園には行った?」
「高校二年と三年のときに。両方ベスト十六でした」
「すごいじゃない」
「でも、やっぱりもっと上まで行きたかったです」

 咲良は素人同然の翔太が相手だから圧勝できたものの、テニスの腕前は地区大会のトーナメントでベスト十六という、翔太の野球とは比較にならないレベルだ。

「やっぱりラッキーも坊主にしてたの?」
「はい。だから今、髪を伸ばしたりカラーリングしたりするのを楽しんでいるんです」

 そう言って翔太はにっこり笑った。汗まで光って見えるのはどういうことだろう。
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