スイートな御曹司と愛されルームシェア

 テニスクラブを出て駅に向かいながら、咲良は隣を歩く翔太を見上げた。

「そのうちバッティングセンターにも行こうか。ラッキーのスイングを見てみたいし」
「しばらくやってないから、かっこいいところを見せられるかどうかはわかりませんよ」

 翔太がそう言って後頭部を搔いたとき、前方から歩いてきた二人組の若い女性が、翔太をチラチラ見ながらすれ違った。

(やっぱりラッキーって見た目はハイスペックよねぇ。このくらいの彼氏なら、うちの親も見合いしろとか言わなくなるわよね、きっと)

 自分と釣り合うかどうかは別にして、外見では文句のつけようがない。問題があるとすれば……無職、ということか。

 そのとき咲良のボディバッグの中でスマホが鳴り出した。取り出して液晶画面を見ると、〝お母さん〟の文字。ため息をつきながらスマホを操作し、〝ただいま電話に出ることができません〟という応答保留メッセージに切り替えた。そして電話をバッグに戻すと、翔太が不思議そうに咲良を見る。

「出なくていいんですか?」
「うん。どうせグチグチ言われるだけだから」
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