スイートな御曹司と愛されルームシェア
「もしもし」
『もう、あんた、後でかけ直すって言ってたのに、いったいいつかけてくるつもりなのっ』
「あー、ごめん、忘れてた」
『忘れてたって、もう! 朝の続きをちゃんと話し合いましょう』
「話し合うも何も、お見合いはしたくないって私の気持ちは変わらないから」
『そんなこと言ってると行き遅れるわよ』
 母の言葉が耳に痛いのは、失恋したばかりだからだろうか。知らず知らず重いため息が出る。
『それとも、誰かお付き合いしている人がいるの? だからお見合いしたくないの?』
 もう面倒くさくなって咲良は「うん」と気のない口調で返事をした。
『あら……』

 電話の向こうで母が言葉を失ったようだ。

「じゃ、そういうことだから、私のことはもう心配しないで」

 咲良が電話を切ろうとすると、母のあわてた声が返ってきた。

『じゃあ、その人を家に連れてきなさい』
「んー、仕事が忙しいから、まあ、そのうちにね」

 曖昧に濁して会話を切り上げようとする咲良に、母が食い下がる。

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