スイートな御曹司と愛されルームシェア
「同情なんかじゃありません。本気で思っています。咲良さんはかわいくてキレイで優しくて、誰よりもステキな女性だ」

 翔太がささやきながら、咲良の頬に、こめかみに口づけていく。彼の唇がまぶたに触れて、咲良がそっと目を閉じると、唇は咲良の目尻に触れた。そこをぺろりと舐められ、くすぐったくて首をすくめる。翔太の温もりが離れ、彼が上体を起こしたのに気づいて咲良が目を開けると、切なげに微笑む翔太と目が合った。

「咲良さん、がんばることに疲れたら、休んでもいいんですよ」
「でも、私がやらないと……」

 言いかけた咲良の唇に、翔太が人差し指を当てた。

「今は何も考えないで休めてください、あなたの心も体も……」

 そのいたわるような表情に胸がじいんと熱くなる。

(どうして翔太くんはそんなふうに私を見つめてくれるの? 私、休んでもいいの?)

 咲良は創智学院で講師として教えるかたわら、給与計算などの経理の仕事や広告会社との打ち合わせ、それに備品の購入などの雑用もこなしていた。ほかに人を雇う余裕がないから、というのがその最大の理由だが、どうせなら私が、とつい思ってしまうのが咲良の性分なのだ。
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