スイートな御曹司と愛されルームシェア
第六章 慰められました

 咲良が目を覚ましたときには、まだ朝早いようで、部屋はほんのりと明るい程度だった。淡いグリーンのカーテンから差し込む薄明かりが、白い天井に映っている。今日の最初の講義は午後五時からの高校一年生向けの英語だ。それだって受講生が六人という少人数。だからこそ一人一人の学習状況をしっかり把握して授業を進めていける。それがこの塾のウリで、それを恭平も目指していたはずなのに。

(朝倉さんが英進会ゼミナールの理事長の姪だったなんて……。知らなかったな)

 そんな人がなぜうちみたいな小さな塾の受け付けなんかに応募してきたんだろう。そう思ってから苦笑した。

(〝うちみたいな〟だって。株式を売却したら、もう私の――私たちの――塾じゃないんだから)

 そう思うと虚しくも切ない気持ちが膨れあがってきた。今の教え子たちは英進会ゼミナールのベテラン講師が受け持つことになるという。大切な教え子が離れて行ってしまうのは、ラッキーが死んでしまったときと同じくらいに胸が痛い。

(受験が終わった後だってことが唯一の救いなのかな)

 小さくため息をついてベッドに起き上がった咲良は、右側で翔太が寝ているのに気づいた。セミダブルの、決して広いとは言えないベッドの端っこで、遠慮するように丸まっている。その仕草がかわいらしい。

「昨日は慰めてくれてありがとう」

 翔太の唇の柔らかく温かな感触を思い出して、咲良は人差し指でそっと彼の唇に触れた。

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