適当魔法少女・りおん!!
「そう緊張しないで――座って下さい――」
対面するソファーへと、物腰の柔らかい声でりおんを誘う鏡花――。
「失礼します――」
「りおんさん――でしたね――」
ソファーの座面にお尻を乗せたりおんを、鏡花は過去を辿る様な瞳で見つめる――。
「あのう、鏡花先生――」
「あぁ、いいえ何でもないの――それより、突然の事で大変だったでしょう――」
「はい――それはもう――」
「ふふっ、そうよねぇ――全く彼らも何を考えているんだか――」
りおんの幻聴でなければ、「彼ら」うんぬんと何か知っている風な言葉を、同情心に滑り込ませて鏡花が本心をまぶした様に思え、見えた――。
鏡花自身は無意識に口にしたのだろう――「学院の諸々の資料ね――」と、ファイルをテーブルの上に置き、「失言」に気づく様子もない――。
とりわけ美人ではないが、概念における「基準」はクリアしており、儚げな瞳と濡れた唇――漆黒の長い髪が、窓から射す太陽光を吸収して仄かに繊維を輝かせる――。
「若い――」
りおんが感じた印象――。
「三十路を過ぎているのよ――」