適当魔法少女・りおん!!
声を張り上げ、右手を振り下ろそうとする、りおん――。
「パラレルワールドって、あると思う――りおんちゃん――」
「えっ――」
予期せぬ「台詞」に、りおんは静かに右手を下ろす――。
「この世界以外にも、幾つかの並行世界が存在し、並行世界の数だけ私やりおんちゃんが生きている――」
「は、はぁ――」
「あっちの世界でも、私はアイドルやってて、りおんちゃんは普通の中学生なのかな――」
「――――」
「それとも、微妙に設定が変化して私が普通に暮らしてて、りおんちゃんがアイドルって事も何処かの並行世界ではあり得るのかな――りおんちゃんはどう思う――」
「わ、わたしは――」
「こんな話、唐突だよね――でもさ、並行世界の自分って何をしてるんだろうって、時々考えちゃうんだよね――」
「りおんちゃんなら、何になりたい――私みたいなアイドル、それともお金持ちのセレブなお嬢様――それとも、幸薄い病弱なかごの鳥の中の少女――それとも――今時の年齢が憧れる――」
「魔法少女とか――」
「わ、わたしなんか何処の並行世界でも、何処にでもいるごく普通の女子中学生だよ――きっと――」
少し淋しげな彼女の背中に「魔法少女」という言葉の余韻を覆う様に「素性」を隠し、りおんは言った――。