あれから、緊張して私はいつも通りには弾けなかった。
それでも片倉くんはじっと何も言わずに聞いてくれた。
それが嬉しいような、恥ずかしいよな
だから、余計に音を外してしまって……

「失敗…しちゃった……」
弾き終わったあと私は恥ずかしくてそんなことを言った。
「優しい音を奏でるね。」
片倉くんはそれだけ呟くと、外を見た。
もう外は日が沈みかけていた。
「ありがとう……」
「またおいでよ。」
「えっ、いいの?」
「うん、その代わりちゃんとインターホン鳴らしてね」
片倉くんはそう言って私を家の外まで案内する。

「ああ!あと」
私が家を出るときに片倉くんは私を呼び止める。
「また聞かせて、水沢さんのピアノの音」
「教えてくれる…なら」
「いいよ」
片倉くんはそう言って笑った。
私も口元を緩めた。

帰りはスキップをするように家に帰った。
今日はピアノの練習を沢山しよう。
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