今宵、桜の木の下で

高校生にもなってこんなところで泣いてたなんて、それはそれでちょっと恥ずかしい。


何も言い返せないでいると

「もしかして、――。雷、あの一番酷かった時からここにいんの??」

藤木くんは私の目を心配そうに覗き込んだ。


「うん……。あ、でも一人じゃなかったんだけど……」


ほら、ここに。


そう思って振り返っても、さっきまでいた男の子が、見当たらない。


「あれ?」


反対側を見ても、―――

チラリと藤木くんの後ろを覗いても、誰もいない。


え、……。どこ行っちゃったの??

隠れる場所なんて、ないのに。


「さっきね」


私は振り返りながら、男の子のいた場所に指を伸ばした。


「男の子も一緒にいたの。ママとはぐれちゃったみたいで……」

「えっ、おい、ちょっと……」

「んっ?」


向き直った私の目に映るのは、動揺を隠せない藤木くんの瞳。

「……っ」

その直後、慌てたようにその視線は逸らされて。


……何、この微妙な空気――?


「……入江」


――――?


「……や、あの……ちょっと……透けてます」


藤木くん言っている意味が解らずに

「え?」

私はポカンと立ち竦む。

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