今宵、桜の木の下で

朝からこう……パパと佳奈子さんが揃って私にかまい始めると、何だか余計にイライラしてきちゃうの。

わかってるの、わかってるんだけど、――

幸せそうに見える家族ごっこの振りは外だけで十分。

ここはいっそ、遅い反抗期ということで逃げてしまおうと思っている私がいた。


「行かないなんて言ってない」

「えっ??」

「学校は休みたくないの。勝手なことしないで」

「……そう、なんだ」


一瞬、驚いた顔をしたものの、佳奈子さんはすぐににっこりと笑顔を浮かべる。


「無理、しないでね。辛くなったらすぐに保健室に……」

「わかってるし」

「美琴、―― そんな言い方はないだろ」


ほらね、――。

パパはいつも佳奈子さんの肩を持つじゃん??


「じゃあ、どんな言い方ならいいわけ??」

「……っ」


傷つけていることくらいわかってる。佳奈子さんはいつだって良い人だ。


「着替えるから出てってよ」

「何だよ、その顔は」

「いいから、ほら、――。
美琴ちゃんも着替えるんだし貴明さんも用意しなきゃ」


腹立たしいのはパパと佳奈子さんにだけじゃない。いつもこんな嫌な態度を取ってしまう自分自身にも腹が立つのだ。


「着替えたら下りてきてね」

「……うん」


不貞腐れた顔をしていると、二人は部屋から出ていった。


自己嫌悪、――― 私って最悪だ。

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