今宵、桜の木の下で
ホッとしたのも、束の間。
「あ……」
直ぐさま液晶が光り出し、マナーモードにした携帯が震え出す。
着信、―― 藤木晴登。
――ちゃ、着信っ!?
ベッドに寝転んでいた私は、慌てて正座する勢いで姿勢を正した。
ど、どうしよう……とにかく早く出なきゃ……。
「……はい」
恐る恐る返事をする私に、携帯の向こうにいる藤木くんは笑っていた。
「メール、短すぎ」
「……っ」
「もうちょっとなかったの?」
「いや、あの…ごめんなさい……」
「いや、別にいいけどさ、メール、苦手??」
「あ、色々考えたんだけどね、何て送ったらいいのかわかんなくて……」
「じゃあ、電話の方がいい?」
え、―――。
それは、もっと……!!
「どっちもっ」
「どっちも??」
私は正座したままベッドに頭からダイブする。
「……どっちも緊張しちゃって……」
「そうきたか」
電話の向こうにいる藤木くんからは余裕すら窺える。
「じゃあ、やっぱメールかな?」
「うん……」
……そうだね、――。
電話よりもメールの方がいいのかもしれない。
――――!!
っていうか、メールするの!?
「あのっ!!」
「え?」
「……メール、するの??」
「俺とメールするの、嫌??」
「嫌、とかじゃなくてっ」
「じゃあ、迷惑??」
「迷惑じゃ…ないけどっ」
「俺、入江とメール出来るの嬉しいんだけど。駄目かな??」