今宵、桜の木の下で
繋いだ手をそっと離して。ゆっくりと振り返った藤木くんは、戸惑ったまま動けないでいた私を少し緊張した瞳で見つめている。
何が何だかわからないまま、私もただ藤木くんを見返していた。
「もう、わかってると思うけど」
「え……」
「俺、入江のこと、好きだから」
「……っ」
それは、突然の告白で、――。
「俺と、付き合ってほしいんだ」
瞬きをするのも忘れて、ただその場に立ち竦むだけの、私。
「あ、のっ……」
真っ直ぐな視線で見入られて、私は藤木くんから目を逸らすことが出来ない。
「駄目、かな??」
―――――!!
「だ、駄目とかじゃっ…ない……」
「それはOKってこと??」
嘘みたい。
嘘みたい。
だって、信じられない。
「……私とって、こと……?」
心の中で呟いたつもりだったのに
「そうだよ」
即答されて、顔を上げる。
「……何で??」
茫然とする私に、藤木くんの瞳がふわりと揺れた。
「入江が好きだから。
一緒にいたいって、思ったから。
ずっと、入江を見ていたいから。
だから、―― 付き合って欲しい」
――――――!!!
ひと言ひと言、丁寧に―― パクパクと金魚のように口を動かす私を不安そうに見つめ返して。
「伝わったかな……?」
「あ、……はい」
「駄目、かな」
駄目かな、ってそんな、――。