今宵、桜の木の下で

「……私で……いいの?」

「入江が、いいんだよ。入江のことが好きなんだ」


嘘、みたい……。

どうしよう、―― 泣きそうになっちゃうよ。


「俺のこと、嫌い?」

「嫌いじゃ……」

「無理しなくていいんだよ??」

「むっ、無理とかは…してない……」

「気を遣わなくていいから、迷惑ならそう言ってくれて構わないから。正直に言ってもらえると俺もスッキリするし」

「あ、あのっ、そういうんじゃないの。
いろいろと話が出来るようになってきて、―― 本当に嬉しいと思ってる」

「良かった、―― じゃあ、好きになれそう?」

「……っ」


好きになれそう?? だなんて、――。


「……なってるよ」


だって、もう、―――。

ずっと前から……。


「…好き、になってる……」

「え??」


ああ、もう、――。

沸騰しそうなくらい、オーバーヒート。


自分でも何を言ってるのか、もう、わかんないや。


「好きに、――

もう、好きに、なってるもん―――」


「……まじで??」


頭の上から聞こえてきた藤木くんの優しい声に

「―― うん」

私は俯いたまま、頷いた。


「やべっ、まじで嬉しいんだけど」

「……っ」


もう、駄目だ……。

心臓が、モタナイ……。


「……あの、私、―― もう、帰ってもいいかな……??」

「えっ??」

「ドキドキし過ぎて……もう、倒れそう……」

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