今宵、桜の木の下で

真っ白な天井。


蛍光灯の灯りが眩かった。



―――――。



白いカーテンが揺れ、女の人の姿が見える。



「あ、気づいた??」



……ここは…保健室だ…。



「入江さん大丈夫?? 貧血起こしちゃったみたいよ」



―― 貧血……。


ええっと……。

藤木くんと一緒に帰ってて、――

イクラがいて、でも藤木くんには見えてなくて、――



―――――。



「……っ」



藤木くんは、――??



「目が覚めたみたいよ」


振り返った先生の左後ろに、表情を失くした藤木くんの顔が見えた。


「藤木くん、――。
入江さんのお家に電話してくるから、入江さんのこと、お願いしてもいいかな??」

「わかりました」

「あの、私……」


あのまま、私……どうやってここに??


「藤木くんがここまで運んでくれたのよ」


私の頭を読み取ったかのように、先生は腰をかがめて目線を交わす。


「じゃあ、5分くらいで戻って来るからよろしくね」


そう言いながら、先生は小走りで保健室を後にする。


―――――。


「……藤木、くん」


―――――。


「迷惑かけて、ごめん、ね」

「……大丈夫か??」


カーテンの隙間越しに聞こえる、声。


「うん、もう平気……」

「そっち、行ってもいい?」

「……うん」


カーテンがふわりと揺れ、静かに開けられる。

そっと中に入ると、藤木くんは空いていた隣のベッドに腰を下ろす。

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