今宵、桜の木の下で

話して……みようかな。


藤木くんには何を話しても大丈夫そうな気がした。

何となく…だけど……受け止めてくれそうな……。

私の願望、なんだけど…ね。


「……あのね」


私はゆっくりと身体を起こし、藤木くんの瞳を真っ直ぐに見返した。


嫌われるのは怖いけれど……おかしいって、変なやつだって、そう思われたって仕方がないや。

信じられない、話だもんね……。

だけど、―― 信じて、ほしい。

聞いてほしいって、思ったの。


「私ね、頭が変になったっていうか、おかしくなっちゃったのかって思ってて……」

「へ?」


突然、―― わけのわからない告白をし始めた私に、当然藤木くんは驚くわけで。


「でも、―― そうじゃないって…わかったの」

「美琴、何で泣いてるの?」


藤木くんは心配そうに私の顔を覗き込み、椅子をもっとベッドの近くへと寄せる。


「いや、ほんと……何て言ったらいいんだ?
俺、まじで混乱してるかも。美琴が何で泣いてるのわかんなくて……」


そう言いながらも藤木くんの表情は優しくて。


「おかしいよね、わけわかんないよね。ごめん」

「いや……」

「ちゃんと話すから……聞いてくれる??」

「当然だろ」


決して茶化したりせず、真剣に受け止めようとしてくれているのがわかって、私は心を決めた。


話してみようと、――。


話すなら、今しかないって思ったの。


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