今宵、桜の木の下で
「家でも見たんだよな? いや――、出たっていう方がいいのかな。」
「うん」
「4回もか……」
そう、4回もなんだ、――。
「その子ども、―― イクラだっけ? その子は美琴に何か言ってくるの??」
「うううん、いつもすぐ消えちゃうの。
この前は、美術室でおえかき上手だね、って」
「そっか」
「じゃあさ、―― 今度出たら美琴の方から質問してみろよ」
え、―――。
それって、藤木くん……。
こんな話、本気で信じてくれるわけ??
「何か言いたいことがあるのか、ただ出てきてるだけなのか。
うーん、別にオドロオドロしてないんだろ?」
ちょっぴり顔をしかめて藤木くんは私を覗き込む。
「あはっ」
「何だよ」
「それがね、怖くないの、イクラ」
「美琴が怖くなくても、見えない俺は怖いの」
「私も最初は怖かった。幽霊見ちゃったって眠れなくて」
「ま、今度出てきたら聞いてみな。怖くないんだろ??」
「うん、そうだね……また現れるかな」
「そればっかりはわかんねえよな……」
ポツリと藤木くんが呟いたのと同時に保健室のドアが開く。
「入江さんどう? 起きれるかしら?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、ゆっくりでいいから準備が出来たら職員室に寄ってね。先生、ついでだから送ってくわ。」
「じゃあ、俺も帰るわ。
美琴――、帰ったらメールくれる?」