今宵、桜の木の下で
「あ―っ」
慌てて近寄ろうとするから、カーペットに躓きそうになる。
「…っ、いったあ……」
『あぶないよみこと』
いやいやいや、―― そんな呑気に足をブラブラさせて……。
「イクラ、急に出てくるんだもん。びっくりしちゃったじゃない」
逸る気持ちのせいか、つい大きな声を出してしまった。
「今までどこに行ってたの??」
『どこにもーっ』
「ど、どこにもって……だって全然出てこないから……」
『みことだってどこにいってたのよ??』
「私、――?? 私はずーっとここにいたよ??」
『いなかったよ??』
「いなかった??」
『さがしたけど、がっこう、いなかったもん』
学校、―――?
『おえかきのとこにも、いったのに』
――――!!
「学校は今日、お休みなんだよ」
『おやすみ?』
「そっ、学校はね、土日はお休み」
『おやすみかー』
ふんふんと、頷いてはいるけれど
『みことのがっこう、いっちゃったよ』
何かがヒットしたらしく、イクラは肩を揺らして笑っている。
……わかってるのかな?
「私のこと探してくれてたの?」
ねえ、――
どうしてイクラは…私にしか、見えないんだろうね?
私に何か言いたいことがあるとか??
何か理由なんてものがあるのかな。
それとも本当にたまたま……
いろんなことを聞きたくて、私は頭の中で質問の順番を考える。