歌声は君へと
――――サイラスは、砂漠のある国から来たという。
砂漠、砂漠か。
広大な、砂の山を私は想像する。そこでは水や食糧が貴重なものだという。砂漠は過酷な環境であるのだから、貴重なのだ。
私は砂漠なんて、見たことがない。
本で読んだことがあるくらいだ。
「それで、それで?」
「毒を持つ生き物も、多い」
「どんなの?死んじゃう?」
鍬をもったまま、キアラがその近くで木を削っているサイラスに続きを促す。
興味津々なキアラを止めるわけにもいかず、私は好きなようにさせていた。こんな森では娯楽も少ない。外の世界というのは、なんだか夢物語のようなのだ。
まだ歩きにくいので、椅子に腰掛け、「貰っていいか」といわれて頷いた木をナイフで削りながら、そんな話をしてくれていた。
「種類によっては死ぬ」
びくり、と肩を震わせたキアラは「怖い」とぼつりともらしながらも、そんな異国らしい話を聞きたがっていた。
私はというと、畑を広げるため地道に鍬で耕していく。
森ということもあって土は栄養豊富で、野菜はすくすく育つ。だが、ここはあくまでも"森"である。
立派な木々の根なんかがところどころ顔を見せているので、畑はそれを避けながら畑を広げている。なので畑の形はそれぞれいびつだった。
だが、別に私やキアラだけしかいないのだから、なんだっていいのだ。
まあ、今は彼がいるけれど。
「見て!お姉ちゃん」
ずい、と差し出されたのは犬のような形の人形だ。
削ったあとがありるが、かなり上手い。スノウみたいでしょ、というそれに頷きながら「貰ったの!」とキアラが笑う。
何を作っているのかと思ったら。
スノウ、ほら!と寝そべっていたスノウに見せているのを見ると、よほど嬉しかったらしい。スノウに自慢しているようだ。