歌声は君へと




 例えば、そう。
 死を望むような、何か…――――ー。




「キアラがいってたの。悲しそうな目をしてるって」

「俺が…?」

「お兄ちゃん笑えばいいね、だって。子供はわかるのね、そういうの」





 サイラスは何かを思い出すように、目を伏せた。
 言いたくないことは、誰にでもある。私だってそうだ。サイラスだって何かあるのは間違いない。

 死んじゃ駄目よ、という。

 鍬を持って近づくと、彼は、顔をあげた。瞳は、揺れているように見えた。泣きそうには見えないのに、泣きたいような顔に見えた。「何故」同じようなことを、私はいったことがある。何故。何故。こんな姿になってしまったなら、生きていても辛いだけたもと。
 他人が何を勝手に、と思うだろう。
 私もそうだったから。

 


「死んじゃ駄目。いい?貴方は、まだ生きて生きて生き抜かなきゃ」

「―――」

「それに…まだ、キアラがに笑顔見せてないでしょ?」



 ちょっと悪戯っぽくいうと、彼はなんともいえない顔をして「わかった」と頷いた。







  ▼2 女、人を助ける  了




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